大阪新世界の一帯は、2008年の大阪オリンピック誘致の候補地として挙げられ、新世界のシンボル・通天閣もそれに伴い撤去される方向で検討が進められていた。誘致に反対する通天閣観光では社長以下、なんとかかつての活気を取り戻して撤去を免れようと、あれこれ策を講じていたが、これといった効果は上がらなかった。ある日、ふとしたきっかけで戦前の初代・通天閣のころからしまい込まれていたビリケン像を見つけた社長は、これを展望台に置いて客寄せしようと考える。像とともに封印から目覚めた神様・ビリケンは通天閣の展望台に居座って、人々の願いを叶えてやろうとするのだが、願かけにやってくるのは指を落としたチンピラや金に困ったホームレスなど、得体の知れぬ者ばかりだった。しかし、ビリケンの御利益は次第に評判を呼び、ついに大勢の人々が通天閣におし寄せてくるようになった。ビリケンは次から次へとやってくる願い事を叶えるためにあちこち奔走し、少しずつ人々に幸せを与えていくが、ビリケンを逆恨みしたホームレスの言動をきっかけに、あっという間に評判を落としてしまう。社長はビリケン像を古道具屋に売り飛ばし、行き場をなくしたビリケンは超能力までも失った。ビリケンの正体を知っている小学生の清太郎に助けられたビリケンは、連れていかれた学童保育で憧れの月乃先生の看病を受けて、像を買い戻すための努力を始める。そのころ、住民立ち退き工作の先兵として生まれ育った新世界に戻っていた江影は、手段を選ばぬやり方で通天閣撤去のための裏工作を進めていたが、その強引さで逆に住民たちの反対運動に火をつけてしまい、組織をクビになっていた。思いつめた江影は清太郎を人質にして通天閣に立て籠もる。なんとか像を取り戻したビリケンは、清太郎の「助けて」という願いを聞いて江影を取り押さえると、月乃に「好きでした」とだけ告げて人込みの中に消えていった。オリンピックの候補地は埋立地に変更になり、再び丁寧に祀られたビリケン像を中心に通天閣には活気が戻った。今日もビリケンは通天閣のてっぺんに仁王立ちになって、新世界の街を見下ろしている。