敗戦--新京や奉天の女学校から看護婦として前線へ動員されていた白蘭部隊と呼ばれた女学生達は間もなく全員共産八路軍につかまってしまった。そして彼等の後方野戦病院の看護婦として徴用されることになった。その病院には、宗方軍医中尉他二人の軍人が徴用されていたが、宗方は外科手術の腕を買われて、捕虜としては破格の待遇で働いていた。彼はアル中の虚無的な男だった。日本人墓地で白蘭部隊のさびしい卒業式が挙行された日、彼女達にとって最悪の事件がもち上った。前線から引き揚げて来て気の荒くなっている八路軍の兵隊達が、彼女達を襲ったのである。生徒たちをその野獣共から護るため、引率教師とみ子は到々犠牲となってしまった。宗方は半狂乱になって自殺しようとするとみ子を押えつけながら、彼自身もまた彼女に対する愛情が身体の中から湧き上ってくるのを感じた。終戦後一年、その頃、国府軍に圧されて、戦局は日毎に八路軍に不利となり、町から急に撤退することになった。この機に日本人は、旧日本軍の集結地へ脱走する事になった。脱走した白蘭部隊は、集合地附近の山中で、敵の包囲攻撃をうけて苦戦中だった。そこへ後から脱走した宗方の運転するトラックが現場に到着した。そのトラックで女学生達と一緒に逃げようとした時、宗方は背中に敵の一弾を受けてしまった。グッとのけぞった彼は、まるでとみ子とトラックを突きのけるようにして路上に転落した。「あーッ」という悲鳴とともに、続いて自分も飛び下りようとするとみ子、必死にすがる女学生達。ガックリ路上に伏して動かない宗方を残して、トラックは次第に遠ざかって行った。