大正末期。関東大震災直後の建築ブームにのって北岡の町は煉瓦土管の加工で活気づいていた。大寺組親分常造はそんな中でライバルの行徳組を倒すためと、煉瓦土管の販売権を新田から奪うため、政界の黒幕山名と手を結ぼうとしていた。娘のおりんを、山名の息子繁に嫁がせようというのだ。しかし、代貸の伸次郎はおりんとは、秘かに想いあった仲だった。そんな時、伸次郎にとって義理のある叔父新田が、常造のために自殺に追い込まれてしまった。新田の代りに煉瓦土管の販売権を握った常造は町の業者から品物を安く買いたたき、私腹を肥やそうとした。そのやり方に怒った伸次郎は、挙式の日どりも決ったおりんと駆落ちし、身を隠してしまった。慌てた常造は人を使って伸次郎とおりんの行方を探させたが、そこへ、隻眼の流れ者一本松が現われた。旅先でおりんの姿を見て、一目惚れした一本松は、もう一度会いたいと、この町に来たのだった。一本松は、早速常造を狙う行徳一家の親分、代貸を斬って常造に恩を売ると、常造の子分丈吉とともに伸次郎を探しに出かけた。伸次郎を兄貴と慕い、常吉のやり方に不満な丈吉は、複雑な心境だった。やがて、二人は伸次郎とおりんを見つけたが、一本松は伸次郎が、かつて危うい所を助けられた命の恩人と知って、手を引いてしまった。丈吉も、やはり伸次郎に刃を向けることは出来なかった。一方、伸次郎は常造と話をつけるべく、大寺組に戻ったが、一度は山名と手を切ると誓った常造は、卑怯にも伸次郎を欺き、闇打ちを食わせた。危うく逃がれた伸次郎は、今はこれまでと一本松、丈吉の助けを得て、大寺組を粉砕すべく、殴り込んだ。愛するおりんの父を斬らねばならない羽目になった伸次郎だったが、任侠道を守るためのやむ得ない仕儀だった。