幼い頃、黒田龍人は偉大な風水師だった祖父・茂丸に“気”を見る手ほどきを受けたが、恐怖で目を閉じてしまい、以来、気を見ることができずにいた。亡き祖父に対するコンプレックスから、龍人はコンピュータで気を見るソフトを開発し、経営コンサルタントの事務所を構えている。この夏、東京は20日あまりも雨が続く異常気象に見舞われ、都市機能が奪われていた。ある日、大家・矢崎の紹介で古道具屋の老店主・鈴木のもとを訪れた龍人は、彼の毎夜の幻聴を風水で治めてやる。しかし喜んだのもつかの間、鈴木の店が地盤沈下で倒壊した。鈴木は店の守り神だった庭石を捨てたバチだと言って、その石が龍神を鎮める石だったから雨も止まないのだと告げる。同じころ、沖縄与那国島では、祖母とふたりで暮らす有吉ミヅチが悪夢に悩まされていた。夢の予言通りに祖母が死に、ミヅチは島のユタの忠告に従って龍人に助けを求める。龍人はミヅチに気が見えることを知って愕然とした。やがて鈴木が亡くなり、龍人は遺言どおり廃棄場へ守り石を探しに行く。石に触れたミヅチは不思議な儀式の幻覚を見た。昔、江戸建設にあたった風水師たちはこの石に霊力を注ぎ込み、江戸を支配する巨大な気の流れ、すなわち“東京龍”を鎮めたのである。長い眠りから目覚めた龍は、東京をかつての沼地に戻そうとしていた。龍人はトラックの荷台にこの石を乗せ、龍を海に誘導して鎮めようと試みる。しかし、当初の予定だったお台場への誘導に失敗し、車は必死で羽田空港に向かって、そのまま海中へ沈んだ。龍人に助けられたミヅチが目を覚ますと、もう雨は止んでいる。街が日常を取り戻し、ふたりは与那国へと旅立った。