豪雨で汽車の止まったホームで待つ男、そして待合室で待つ女、彼らは神田明神を見つめながら昔のことを思い出す。その男、秦宗吉は田舎から出てきたが絶望し、自殺しようとしていたところをその女、お千に助けられたのだった。お千は情夫に悪事の片棒を担がされながら、宗吉を生きがいとして生きるようになっていき、宗吉も苦しい生活を送りながら、医者になるという夢を果たそうと努力するが…泉鏡花の『売色鴨南蛮』を溝口が映画化。溝口最後のサイレンと作品で、音楽と活弁士・松井翠声の解説とが録音されたサウンド版として製作された。また、溝口の第一映画移籍第一作に当たり、この作品以降山田五十鈴とのコンビでヒット作を連発した。