大阪に逃亡した義賊鼠小僧次郎吉だが、今はお仙という女郎と同棲中である。お仙とは京から大阪に下る三十石舟で知り合った。お仙は強欲な十手持ちの兄仁吉のために身を持ち崩していたが、凶状持ちの次郎吉に激しい恋慕を抱く。そんなお仙の積極さを次郎吉は疎ましく想うようになる。ある日、裏長屋に病気の浪人の父と住むお喜乃に出会った次郎吉は、気持ちがお仙から清純なお喜乃に傾くのを止める事が出来なくなる。離れていく次郎吉に自棄になるお仙。兄の仁吉は全てを察し次郎吉をおびき寄せて捕縛しようと、お仙を監禁する。お喜乃の境遇が、かつての自らの盗みが原因と知った次郎吉は衝撃を受ける。しかも、仁吉がお喜乃の美貌に目をつけ、自身の出世のため好色な同心重松の妾にすることを企んでいる事も分かり、次郎吉はお喜乃を救おうとする。仁吉はお喜乃の父を殺害、お喜乃を誘拐する。そこへ次郎吉が現れお喜乃を救う。お喜乃とともに逃げようかと迷う次郎吉であったが、仁吉一味を倒す事が自身の義務と考え駕籠屋に命じてお喜乃を安全な場所に逃がす。御用提灯が光る中を単身乗り込んだ次郎吉は重松を殺す。次に仁吉の家に入るとお仙が次郎吉恋しさのあまり兄を殺していた。「次郎さん。忘れさせないよ!」と叫び、お仙は身代わりとなり窓から川に飛び込む。「川に逃げたぞ!」「川だ!」叫ぶ捕り手。川に集まる御用提灯。屋根の上では、逃げた次郎吉が「おせん。お喜乃。見ねえ。良い月だぜ。」と涙を流していた。