雲州公が小娘に手をつけようとして、噛みつかれ、座敷牢に押しこめているという噂があった。これをタネにユスろうと、悪旗本王手飛車連の鯉沼伊織・三池要人・横地帯刀らは、上野輪王寺の宮の御使僧に化けて雲州邸に乗りこんだ。が、一足先に、輪王寺の宮の使いと称する振袖姿の寺小姓がその娘お半を金まで添えさせ奪って行っていた。寺小姓はユスリ・タカリが専門の、町のやくざ弁天小僧菊之助である。仲間には日本左衛門・南郷力丸・忠信利平・赤星十三がいる。弁天小僧は情婦お吉の家にお半を連れ帰って、お半を売り飛ばすつもりでいたが、その清純さにうたれ、金を持たせて、病気の父のいる長屋に送り戻してやる。お半が父に叱られ金を返しにお吉の家へ来たとき、御用提灯が迫り、弁天小僧はお半を連れて逃げた。今は互いに別れがたい気持だった。振切って別れた弁天小僧は百本杭で一人の釣客に会う。その男こそ、いれずみ奉行と噂の高い遠山左衛門尉だった。--雲州公ユスリの一件が老中に聞こえ、王手飛車連の首が危くなった。老中筆頭松平は甥の伊織に隠居届を出し、息子に嫁を貰えとすすめる。そこで、伊織は、舶来物の羅紗地をタネに、呉服屋浜松屋幸兵衛をユスリ、身代そっくりを持参金に娘お鈴を嫁によこせと吹っかける。祝言の噂を開き、白浪五人男は江戸を離れる最後の大仕事に、この浜松屋に目をつけた。弁天小僧が文金高島田で女装し、万引をよそおい、インネンをつける。一人の武士が女装を見破ると、弁天小僧は双肌ぬいで大あぐらをかき、タンカをきって引きあげた。浜松屋に身をおいていたお半が涙で見送る。さっきの武士は日本左衛門だった。奥に招じ入れられると、忍びこんでいた赤星・忠信と共に花嫁の持参金をよこせと居直った。幸兵衛はいう、「どうでもなされ。これも二十一年前赤子の長男を捨てたむくいか」。話をきいて日本左衛門以下は悪旗本から、浜松屋を護ってやることにした。弁天小僧は実父が誰かを悟った。祝言の夜、鯉沼邸へお鈴の身代りにお吉が現れる。弁天と鯉沼が争いかけると、遠山奉行が現れ、弁天を逃す。日本左衛門の家に捕方が迫っていた。船宿網十に隠れるお半とお鈴を要人と帯刀が襲っていた。弁天は捕方を逃れて屋根を飛びながらお半を求めた。やっとたどりつき、お半と実父と妹にひと目会う。浜松屋も弁天を我が子と知った。が、弁天はそれを否定し、そのまま捕方に捕まる。--息子を、父と妹と恋人が涙ながらに見送ったのである。...