昔々、奈良に都があった頃からここは何も変わらないそうな...都があったその昔から変わらず雄大に漂う奈良の風景、そしてそこに生きる青年・太一(たいち)の日常を描いたフィクション作品。祖母・両親・妹と暮らす太一。昼は警備会社に務め、夜は好きなお酒を少々呑む。ある日太一は、飲み屋でマスターの知り合いという少女、碧(みどり)と出会う。翌日いつものように、仕事帰りの道を自転車で走る太一の前にひさしぶりの美しい夕景がひろがった。太一は少し遠回りをして帰ろうと思い立つ。と、昨日飲み屋で会った碧が前を歩いていた。2人はオレンジ色に光る空の下で偶然の再会をする。やがてお互いに好意を抱きはじめる二人だったが...。淡い恋・平凡で穏やかな日常が淡々としたリアリズムで描かれてゆく本作品の結末で、見る者を一挙に思考停止状態に陥れるような「信じられない出来事」が太一を襲う。日常的な生活の中に突然訪れる非日常的な事件を描くことで、人が"個"であることの意味を見る者に問いかける衝撃のラスト