--鍋島家の囲碁師匠・又七郎は対局中藩主肥前守の手打ちになった。彼の許婚者・お小夜は側女に召出されていた。彼の死体を前に母秋篠は鍋島家を呪いながら自害して果てた。そのとき、又七郎の愛猫・玉簾が現れ、二人の血汐をなめつくすと、妖しく鳴いて消えたのである。これよりのち、肥前守の寝室に夜な夜な怪猫が現れ始めた。秋篠の怨霊が猫にのり移ったのだ。又七郎の亡霊も現れた。鍋島家には分家をたててお家乗っとりをはかる家老・秋沢筑後一派と、お家大事の重臣・小森親子、二番家老・島多門、白石三平一派とがあった。--肥前守は病同然の身となったが、又七郎母子の法要を営むと、少しは回復した。が、本復祝いの席上、怪猫がまたも現われ、肥前守の愛妾・お小夜の方を奪って消えた。お小夜の方とはかつてのお小夜のことである。肥前守は遂に発狂し、座敷牢に閉じこめられた。秋沢一味は早速分家の相続願いを江戸表へ送るが、白石三平の機転ではばまれた。一味は肥前守に毒を盛ろうとしたりする。行者白竜禅師は、腰元に化身して肥前守に近づこうとした怪猫の正体を見破る。怨霊はお小夜の方に乗り移った。護衛役・小森大助は肥前守を座敷牢から救い出し、追手をさけて不動山に入った。怪猫はお小夜の方の姿のまま、肥前守を招きよせた。が、白竜禅師の呪文に、その正体を現し、無気味な叫び声を残して消えた。禅師の数珠で回復した肥前守は陰謀の証拠の密書を持って城へ帰り、対立する二派をおししずめようとした。二派の乱闘の最中、再び怪猫が現れて肥前守に襲いかかるが、--たちまち白竜の呪文である。怪猫は“神鏡”の発する火焔にやかれ、大助と白石に斬り伏せられる。むろん、謀叛の一味も滅びたのである。