明治の初期。性神崇拝の風習が根強く残っている八代村に武次郎が流れ込んで来た。彼はこの村で宿を経営している刑務所時代の仲間伝兵衛と結託し、金精堂の堂守りを殺害した。自殺とふれこみ、お堂を乗取った二人は、時を移さず「立川教本部」の看板を掲げ、布教に乗りだした。女人救済、それに男前の教祖というので法悦の祈祷を求める村娘たちが、押しかけてきた。蛇取り女おきんも信者の一人だった。彼女は妹のおぎんと共に暮していたが、村の男たちからは、魔性の女といわれ誰も相手にするものはなかった。やがて、おきんは武次郎を恋慕するようになった。ところが、色と欲の淫蕩密教で大儲けを企む武次郎には、邪魔な存在でしかなかった。そんなある日、姉妹は村を訪れた堂守りの孫娘お恵と知り合った。そして堂守りの死体を最初に発見したおぎんは、彼が握っていた煙草入れの根付けをお恵に渡した。そんな折、姉妹の家に消息を断っていた藤七が戻ってきた。彼は亭主気取りで、おきんの体をもとめたが、彼女が妊娠していると知って怒り狂った。危険を感じたおきんは、武次郎に一部始終を話し、村を出て世帯を持ってくれと哀願した。それを聞いた武次郎は堕胎させようと焼火箸を握った。だが、おきんが、砂金を持っていると知るとその態度は一変した。武次郎と伝兵衛の奸策にはまった姉妹は、莫大な砂金を騙し取られると洞窟に閉じこめられ、おきんは武次郎に殺されてしまった。ある夜、伝兵衛は堂守り殺害の証拠品の煙草入れの根付をお恵がもっていることを知り、彼女を殺そうとした。だが次の一瞬毒蛇を首に巻きつかれて絶命した。それは、洞窟を脱出したおぎんが投げつけたものだった。翌日は村祭。その最中、お恵の手引で武次郎のところへ刑事が殺到した。山中へ必死に逃げる武次郎。その眼前におぎんが現われた。武次郎は、おぎんの放った毒蛇に巻きつかれ、眼下の海へ転落していった。